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祥野獣一の日々の記録


by show_no_11
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「MW」

★★★★☆

なかなか興味深い作品だった。
何故、あまり話題にならなかったのだろう?
なったのかもしれないが、私は知らなかった。
邦画の宣伝の仕方っていつも思うけど、良作ほど地味だったりするよね。

原作が手塚治虫、主演が玉木宏、山田孝之って時点でもう少し話題になってもよかったのでは?と思う。


原作を読んでみないと最終的な判断はできないけれど、私は面白かったと思う。
原作ファンにはきっと納得できない部分とかあるんだろうけどね。

「のだめ」で千秋真一キャラが定着しそうな玉木だが、完全なるヒールを演じている姿には好感が持てた。

残酷なシーンや過激なアクションは現代映画においてはもはや必要不可欠な気もする。
ってか、自分が幼少の頃のTVや映画では普通だった。
いつの頃からか性的な描写や残酷で過激なシーンは影を潜めていった。

時代の流れと言ってしまえばそれまでかもしれないが、逆にそれを抑制してしまったからこその現代なのではないだろうか?

この映画ではそれをちゃんと再現している点も好評に値する。
ただ原作での同性愛描写を省いているようだが、どうやらそれはスポンサーの意向が反映されたようである。
残念だ。

とはいえ、存分にエンターテイメントされた映画になっている。

冒頭の沢木刑事(石橋凌)と結城美智雄(玉木宏)の追いつ追われつのシーンから引き込まれた。

最終的に毒ガスで世界を変えようという考え方はどこか、核抑止力を連想させ、「沈黙の艦隊」を思わせる。
でも世の中の大半の大人達は「地下鉄サリン事件」を連想するに違いない。
そして、有害だと判断するのだろう。

最近の子供達はこういった表現を目にする機会が極端に減ったように思う。
だからこそ痛みや恐怖に鈍感になってしまったのではないだろうか。

有害を抑制することが昨今の残虐な事件を助長しているように思えてならない。

アレルギーと同じだ。

先進国は国の発展とともに清潔を保つようになった。
すると身体が有害な菌に対しての免疫力を失う。
結果それほど毒でもなかったものが何倍もの力を持つ。
抵抗する力が無いばかりにアレルギーを起こすのだ。

現代社会は身体的にも精神的にもアレルギーを起こしている。
良いことと悪いことの判断基準が曖昧すぎる。
そんな時代にしたのは今の大人達だ。


だからといって子供達に率先して見せるべきだとは思わないが、ある程度それを許す社会でもいいのではないだろうか?
必要悪は必ず存在するのだ。

抑圧は常に爆発と隣り合わせなのだ。


そういった現代社会の内包する問題を手塚治虫氏は予言していたように思えてならない。
氏の作品には残酷な表現や激しい性描写を用いた作品も多々存在する。
それを子供達が目にするであろう漫画で表現したのは子供達へのある種のメッセージであり、警鐘だったのだと私は思う。


私は大人になった。
子供でいることを望んでも人はいつか大人になる。

表現者として現代社会と今一度向き合うべき時が来たのかもしれない。
by sin1_s | 2010-02-08 20:20 | Movie Room