祥野獣一の日々の記録


by show_no_11
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JACROW観劇、感想など。

少々長い記事ですが、最後までお読みいただければ幸いです。

昨日は榴華殿の稽古だった。
よくよく考えたら本番まで後一ヶ月ちょっとである。

やや危機感を感じた。

ただでさえ少ない稽古日数なのに、10月は僕自身出られる稽古が数回しかない。
11月からはガッツリ向き合うつもりだが、スタートで皆と足並みが揃えられない。
これには少し不安を感じた。

でも共演するメンバーには力を感じる。
その点に不安はない。
良い作品になればイイなと思う。
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さて、その稽古の後、JACROWを観に行った。
よくよく考えるとJACROWの作品を客席で観るのは初めてだ。
前回#13は出演公演が重なり参加出来なかった。
#12,11は出演させていただいた。
#11にお誘いいただくまで、存在は知っていたが、恥ずかしながらJACROWを拝観していなかった。
しかし、#8,9,10はその後DVDで鑑賞したので、あたかも#8からに関しては一ファン然としている(笑

今回は通常公演とは異なり、3本のオムニバスで構成された番外編。
ナンバリングも13.5の位置づけ。
それぞれ30分の計90分。
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オムニバスの1本目と3本目はJACROWの主宰で作演出の中村暢明氏の作品。
2本目は最近のJACROW出演者ならおなじみなんだが、#11「紅き野良犬」
より演出助手を務めるイハラケンタロウ氏の作品だった。

#11「紅き野良犬」は僕が出演した初めてのJACROWだ。
いわばイハラケンタロウ氏は僕にとってJACROW同期なのである。
と勝手に思っている(笑
これは余談だが、JACROWフリークの方ならご存知だろうが、JACROWは劇中タイトルコールをする。
僕はこの作品#11のタイトルコールをさせてもらった。

さて今回のこのオムニバス、1本目の中村作品は過去にJACROWが上演した作品の再演だった。
以前は都電荒川線を借り切っての公演だったようだ。

結婚式の待合室にやってくる、大学時代の映画研究会の仲間達。男が3人に女が1人。

女は新郎と同棲までした恋人だった。
同じ映研仲間だった新婦にその恋人を奪われたことが最初に明かされる。
そして徐々に明かされる真実。
男たちもまた新婦と恋仲だったり、二股だったり、セフレだったりしたのであった。
それぞれの事情と招待状に書かれた挑戦状という意味ありげな言葉とを巧みに会話に乗せ物語は紡がれて行く。

会話のテンポが小気味良く、それぞれのキャラクターがはっきりしていてとても観やすい作品だった。
謎が提示されそれが明かされていく様はサスペンス的でJACROWの作品に流れる根源を感じた。
安心して観ていられる作品だった。

2本目、イハラ氏の作品。
演出助手としての彼には全幅の信頼を置いている僕は彼の作品を観るのは初めてだ。
どんな作品なのかわくわくしていた。

やり手社員の男は派遣の女に恋をする。
彼女に文学的な嗜好があることを知った彼は小説家の卵である友人にメールの代筆を懇願する。
友人は乗り気ではなかったが、渋々了承し、派遣の女へのラブメールの代筆を始める。
そんなある日、お互いに友人を連れたWデートが行われるのだが、代筆の友人は派遣の女に一目惚れしてしまう。
さらに派遣の女も代筆をする友人の方に好意を感じてしまう。
こうして奇妙な三角関係が始まり、物語は進行する。
女の派遣期限が迫る中、社員の男は彼女への告白を決意する。
すると友人はその告白メールの代筆を志願する。
自分の想いをメールに乗せて。
社員の男が一人浮かれて出ていくのだが、公園で酔っ払いの男たちに絡まれ瀕死の重傷を負う。
その報せを受けた友人は彼の元へ。
そんな時、社員の男の元に派遣の女からの告白の返事が送られてくる。
重傷の男は友人にそのメールを読んでくれと頼む。
そのメールには告白の断りと代筆をし続けた友人への好意が記されていた。

とまあ説明すると長くなるのだが、起こる出来事や物語の展開がやや都合が良すぎる感が否めない。
「こうなるんだろうな」という思いを良い意味でも悪い意味でも裏切ってくれなかった。

ラストシーン。
代筆の友人と派遣の女が、社員の男の運ばれた病院の待合室で何も話せずにいる。
医者が、経過次第では命の危険があると知らされ、その空気はさらに重くなる。
そこで突然友人が立ち上がり、その後の展開を匂わせ、そこで幕は閉じる。

素材そのものは使い古された感があるので、何かそこに違うテイストを混入してもらいたかった。
そうそれは多分JACROWが求めて止まない濃密な空気ではないだろうか?
どうすれば濃密な空気が流れるのか、ではなく、濃密な空気そのものをエッセンスに物語を紡いで欲しかった。
演者が素晴らしかったゆえにそこに流れる空気が濃密には感じられたのだが…。

すこし手厳しく書かせてもらったが、これはある意味同期であるイハラ氏への賛辞だと思っていただきたい。

そして、その濃密な空気を見事に手玉に取り、重く苦しく、それでいて観る者の胸を鋭く突き刺した作品が3本目、中村氏の作品である。

ある不動産会社の会議室、いつもの様に営業3課の朝会が行われる。
それは毎日行われる、見慣れた風景。
そんなテイストで幕が上がる。
課長の議事進行により、朝会は進む。
優秀で気の利く新人社員、脂の乗った中堅社員、そして半ばリストラで畑違いの部署に飛ばされた元ベテラン技師。
営業報告で朝会は進む。
新人と中堅はそれぞれ非の打ち所がない営業報告。
しかし、元技師には報告できるような営業が出来ていなかった。
するといつもの如く始まる課長のパワハラ。パワーハラスメント。
暴言、暴挙、罵倒の嵐。
重苦しい空気の中、物語は進む。
そして呆れ返った課長が元技師にコーヒーを頼む。
コーヒーを入れに行った元技師が戻ってくると、その手にコーヒーはない。
コーヒーがあるていで元技師がコーヒーを置くのだが、そこにコーヒーカップは存在しない。
「おまえはコーヒーも入れられないのか!!」
再び課長の怒号。
しかし、ここから物語が急展開する。
そう、既に元技師はこの世の人ではない。
自ら命を断っていたのである。
それを受け入れることの出来ない課長は誰もいない元技師の席に向かって喋り続けていたのだ。
毎日決まったように行われるパワハラの朝会。

鳥肌が立った。

その世界を成立させている役者達にも脱帽であった。

この作品の題名「リグラー」はボウフラの英名である。
正にその名の通りの作品だった。
そして終始この作品は何故か鈍色に見えるのである。

この作品をさらに谷底へ落としたのが、元技師の身重だった妻の存在である。

夫の自殺をキッカケに流産し愛する者をいっぺんに失った妻。
地獄の形相で会議室に乗り込み、課長に夫を返せと哀願する。
しかし、課長の目は覚めないまま。
誰もいない元技師の席に再び怒号が飛ぶ。

谷底深くへと落ちたこの物語が終わったことを告げる暗転。
そこで課長役の今里氏が一言、
「JACROW#(ナンバー)14、冬に舞う蚊(モスキート)」

ええええぇぇぇ~~~~~!!

何と、ここでタイトルコールである。
先ほども述べたが、JACROWにはタイトルコールがある。
それ自体は何ら問題ないのだが、問題なのはタイトルである。

今公演はJACROW#13.5。
つまり本公演ではない番外編のオムニバスである。
タイトルコールをするならば「JACROW ナンバー サーティーンハーフ 窮する鼠」
となるはずなのだが、な、何と次回#14「冬に舞う蚊(モスキート)」のタイトルコールをしたのだ!!
どういうことかと言うと、この「リグラー」ボウフラが次回「モスキート」蚊になるというのである。

この鈍色の舞台が再び蘇るわけだ。
本公演として!
このカラクリにまた鳥肌が立った。
してやられましたよ。。。

そんなJACROW#14「冬に舞う蚊(モスキート)」は来年1月、5〜10日に、東京メトロ丸ノ内線、新宿御苑前駅より程近いサンモールスタジオで上演される。
興味を持った方は是非とも観に行くべきだと思う。
もちろん今回のこの作品「リグラー」を観ていなくても楽しめる作品になるだろう。
社会問題を切り裂き、抉り、掴み、捨てる。
吐きたくなるほどの濃密な空気がきっとそこにあるはずだ。

残念ながら僕はその舞台を観ることが叶わない。
何故なら、舞台の上にいるからだ。

皆様のご来場、心よりお待ちしております。
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by sin1_s | 2010-10-17 22:47 | Stage Room